Hakuba Valleyスキー場の一つである、長野県小谷村の「栂池高原スキー場」。
そのスキー場で、刻々と変化する天候や雪の状態を見極め、利用客の安全を守るため日々任務に励んでいるのが「栂池パトロール隊」です。
今回はそんなパトロール隊の仕事内容や、スキー場の楽しみ方を取材させていただきました。
取材にご協力いただいたパトロール隊のみなさん。左から猪股さん、隊長の三輪さん、清水さんです。
スキー場の安全管理に奮闘
ーー 早速ですが、簡単に一日の流れを教えてください
三輪さん「パトロール隊の一日は、営業開始前のコース点検から始まります。コース内の設置物に異常がないかチェックして回り、看板やポールが倒れていたら適切な位置に戻します。雪崩の危険性が高い箇所は人為的に雪崩を誘発し、営業時間中に事故が起きないようにします」
パトロール隊は利用客の事故や怪我等を未然に防ぐため、最前線に立って様々な役割を担います。
三輪さん「営業開始した後も、設置物と雪面状況などの確認を引き続き行い、利用客の安全確保に努めます」
その他にも、危険個所に立ち入っている人がいないか、傷病者がいないかなど、コースの巡回を行ないます。そして問題が発生したら、しかるべき対処を施します。
三輪さん「スキー場の営業終了時間が近づくと、最終のパトロールに行きます。ときどき、視界不良や体力低下によって身動きが取れなくなってしまったお客さんがいるので、そんなときは下山を手伝うこともあります。」
全員が下山し終えたら、ようやく長い1日の任務が終了します。
※ナイターの対応や翌日の準備をすることもあります。
事故が発生しやすいコース
ーー 事故が発生しやすいコースはどこですか?
三輪さん「親の原ゲレンデ・からまつゲレンデ・鐘の鳴る丘ゲレンデの3つは斜度が緩いので初心者が多く、その分事故が起きやすくなっています。」
三輪さん「もう1ヶ所は、ハンの木ゲレンデの中腹。やや斜度がきつく、途中からコース幅が狭まる箇所があるので、転倒だけではなく衝突によるケガ人が出てしまうことがあります。さらにこの辺りは霧が滞留し視界が悪くなりやすいので注意が必要です」
ーー 転倒や衝突以外ではどのような事故がありますか?
三輪さん「最近では、リフトの乗車中に安全バーを上げてしまい、子供が落下した事故がありました」
幸いにも大怪我にはならなかったそうですが、一歩間違えれば命の危険も。安全バーはリフトを降りる直前の所定位置で上げるようにしましょう。
三輪さん「あとよくあるのが、リーシュコードを付けていなかったためにスノーボードが下に流されてしまうケースです」
リーシュコードは、スノーボードのビンディングと足に取り付け、板が流されるのを防いでくれるアイテム。
初心者が急斜面を歩いて下ろうと板を外したときに、板が流されてしまうケースが多いとのこと。実際にこの取材をしている最中に、板が流されてしまったお客さんがいました。
リュックの中を大公開
ーー いつも大きなリュックを背負っていますが、何が入っているんですか?
猪股さん「患部の治療に使用するガーゼや三角巾の他に、体温の低下を防ぐ大きな毛布などを持ち歩いています。あとガムテープは壊れたものを固定するときなど、使い勝手がいいので常に常備しています」
緊急時に素早く対処できるよう、様々なものを常備しています。
滑ること以外の楽しみ方
ーー 雪のコンディションがイマイチな時や調子が悪い時、どう楽しめばいいですか?
猪股さん「景色のいい場所を探してみてはいかがでしょうか?個人的には栂の森ゲレンデからの眺めが大好きで、天気が良ければ、白馬乗鞍岳・小蓮華山・白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳まで一望できます。これが自然に恵まれた栂池高原の魅力でもあります」
三輪さん「私のおすすめは、ハンの木ゲレンデ中腹からの眺め。八ヶ岳や浅間山などの山々と麓の街が一望できるんです。」
毎日ゲレンデを見続けているパトロール隊ならではの発想ですね。SNS用に映える写真を狙ってみるのも良さそうです。
ーー 他にはありますか?
猪股さん「動物や動物の足跡を探してみるのもおすすめです。運が良ければ木々の間にカモシカが見えるかもしれないですよ!」
上の写真は、キツネもしくはタヌキなどの小動物の足跡。雪に深い足跡がついていれば、カモシカの可能性が高いそうです。リフトに乗りながら何の動物か想像してみるのもいいかもしれないですね。
さいごに
パトロール隊は雨の日も吹雪の日も最前線に立って、利用客の安全を守るために日々奮闘しています。時には命の危険にさらされることも。
スキー場のルールを守り、ルールの範囲内で楽しむように心がけましょう。