3月に公開した「【山岳エコツーリズムの聖地を目指して】誰一人取り残さない!HAKUBA VALLEY SDGsの取り組み」で、HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の取り組みをご紹介しました。
今後は「HAKUBAVALLEY SDGsレポート」と題して、SDGsに取り組んでいるHAKUBAVALLEYエリアの事業者を紹介していきたいと思います。
第一弾の今回は、小委員会の初期メンバーであり白馬八方尾根スキー場の運営会社のひとつでもある八方尾根開発(株)にお邪魔してきました!
八方尾根開発は、国内のスキー場では初のSDGs専門部署「SDGsマーケティング部」を立ち上げた他、白馬八方尾根スキー場のリフトの使用電力を再生可能エネルギーに転換するなど、積極的にSDGsに取り組んでいます。
八方尾根開発 株式会社 八方尾根開発は1960年に設立し今年で61年目の歴史ある会社で、主な事業は白馬八方尾根スキー場や白馬八方温泉の運営。 |
SDGsマーケティング部の発足とPOW Japanとのパートナー契約
八方尾根開発が「SDGsマーケティング部」の立ち上げ準備に入ったのは2020年3月。同じ時期にPOW Japanとパートナー契約を結び、3ヶ月後の6月に国内のスキー場として初のSDGs専門部署が正式に発足しました。太田さんと松澤さんともう1名の3名で運営しています。
太田さん:「毎年のように雪不足が話題になるなかで、スキー場を維持運営するために降雪機を稼働して雪を作らなければいけないのですが、それが大量のCO2を排出し気候変動の要因になってしまいます。その矛盾に対して『スキー場としてどうするべきなのか?』と考えるなか、POW Japanの活動を知り、弊社の代表がその理念に賛同しサポーターとなりました。同時に、企業として環境に配慮した取り組みをするべくこの部署が発足したそうです。」
松澤さん:「SDGsマーケティング部に異動したはいいものの、私たちはSDGsについての知識はほとんどなくて…。POW Japanは海外のスキー場の事例に精通しているだけではなく、滑り手の目線からアドバイスをしていただきました」
POW Japanとパートナー契約を結び、不定期のミーティングや、フォトコンテストを共催。フォトコンテストはすでに終了していますが、概要を知りたい方はこちらのリンクをご覧ください。
【雪景色 ~わたしのまもりたい八方尾根~】白馬八方尾根スキー場がインスタフォトコンテスト開催!
「SDGsマーケティング部」の仕事内容と役割
八方尾根開発のSDGsマーケティング部は、地球温暖化やカーボンフリー対策を取り入れたブランディングにより、企業価値を高めるとともに、地域社会への貢献と新たなパートナーシップの形成などを通じてサステナブルなマーケティングを推進することを目的としています。
ところが部署が発足した当初は、SDGsマーケティング部の役割を知られていなかっただけでなく「SDGs」という言葉自体を知らない社員も多かったそう。そこでまず取り掛かったことは、部署の役割やSDGsに関する知識を社内に周知することでした。
松澤さん:「部署が発足した当初は『SDGsマーケティング部?』『SDGs??』という感じでした。私たちも手探りの状態で何から始めたらいいのかわからなかったのですが、まずは私たちの役割やSDGsの基礎知識を社員全員に理解していただこうと。『八方尾根開発SDGsニュース』というメールマガジンを社内向けに配信したり、SDGsのポスターを各部署に設置したり、社員の意識調査もしました」
SDGsマーケティング部が実施した意識調査の結果、『SDGs』という言葉は知らないものの比較的環境意識が高い人が多かったとか。
太田さん:「想像していたよりも多くの社員が環境のことを考えていてくれました。やっぱりスキー場で働いている人は雪や自然が好きな人が多く、強い思いを持っていました。本当に心強かったですね」
松澤さん:「『こういうのをなくしたほうがいいのでは?』『こういうことを実践してほしい』という意見もたくさんいただいて。それらの意見を参考に、コスト的に弊社でできそうなことにはすぐに取り掛かりました」
リフト9本の使用電力を100%再生可能エネルギーに転換
スキー場が環境問題に取り組む上で最も効果的なのが使用電力を再生可能エネルギーに転換すること。
八方尾根開発は2020-21冬シーズンからリフトの電力切り替えを実施。白馬八方尾根スキー場で所持運営しているリフトは全部で13本。そのうち9本は100%再生可能エネルギーに切り替え、3本は10%再生可能エネルギーに切り替えて運行しています。残りの1本も電力会社と交渉を進めているそう。
松澤さん:「まだ切り替えられていないのはスキー場最上部のグラートクワッドリフトです。このリフトは通年営業しているので、早急に切り替えたく電力会社と交渉しています。再エネに切り替えられる弊社所持施設は、本社や温泉、リフト小屋など全部で110施設あります。そのうち86施設は再エネに切り替え済みです。契約している電力会社は4社で、それぞれの担当者様に頑張っていただいたおかげで、再エネに切り替えた上で電力コストを以前よりも下げることができました」
契約している電力会社の一つ「みんな電力」は、八方尾根開発の68施設に再生可能エネルギーを供給。県内の水力発電施設から供給しているため、電気の地産地消になっているとか。
再生可能エネルギーへの切り替えの他に、八方尾根開発のSDGsの取り組みは多岐に渡ります。その一例は以下の通り。
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SDGsマーケティング部として活動するメリット
「SDGs」と名前の付く部署が発足したことで多くのメリットがあったそうです。
太田さん:「SDGsマーケティング部ができたことで、電力会社も私たちに営業をかけやすくなったでしょうし、双方にメリットがあったかと。電力以外でも、ちょうど取り組もうと思っていたタイミングで関係者からお声がけいただいたり、相談しやすい雰囲気になったと思います」
松澤さん:「会社の上層部がHAKUBAVALLEY TOURISMの事務局の方と連絡を取り合って、部署が発足したのとほぼ同時にHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会に参加させてもらっています。小委員会には、索道事業者、飲食業、宿泊業などさまざまな事業者がいらして、すでに何年も前からSGDsに取り組まれている方もいる。そういった方たちと情報交換をすることで、自分たちの進むべき方向が少しずつわかってきました」
今後は発信力を強化し、地域を引っ張る存在へ
部署が発足してからのこの一年は基礎固めの年。本格的な取り組みはこれから進めていくそう。
太田さん:「SDGsの取り組みを発信する場が必要だと感じています。白馬八方尾根スキー場の公式HPに『白馬八方尾根の環境への取り組み』ページを作ってみたものの、まだまだ発信力が弱いと感じています。フランスのスキー場で使用電力を再エネに切り替えたら来場者が増えたという事例があるので、私たちのこうした取り組みを広く知っていただき、賛同者が増えることを願っています。コロナ禍でどこまでできるかわかりませんが、さまざまな団体とコラボレーションしてPRする場を作れたらいいですね」
松澤さん:「八方尾根は、自然環境・雪・高山植物など、SDGsに取り組めるテーマがたくさんあります。その中で自分たちができることを少しずつ進められるように社員・地域の方たちと共に取りくみたいです。」
HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の草本委員長が「中長期目標を決めるミーティングでスキー場に『2030年までに100%再生可能エネルギーに切り替える』と宣言してもらいたかった」と話していたことについては…
松澤さん:「八方尾根開発としてはすでに再エネへの切り替えを進めていましたし、遅くても2030年までに100%切り替えるつもりでいました」
太田さん:「『白馬八方尾根スキー場としてこんなことしているよ!』と可視化することで、他事業者やスキー場の参考となり、地域を引っ張っていけるような存在になれればいいなと思います」
八方尾根開発のSDGsの取り組みは始まったばかり。今後の活動に注目です!
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