【山岳エコツーリズムの聖地を目指して】誰一人取り残さない!HAKUBA VALLEY SDGsの取り組み

2020年10月、HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会は「SDGs宣言」を発表し、HAKUBA VALLEY SDGsビジョンと中長期目標を掲げました。

※一般社団法人 HAKUBAVALLEY TOURISM・・・大町市・白馬村・小谷村、大北地区索道事業者協議会、各市村観光団体が設立した広域型 DMO(観光地域づくり法人)で、「世界から選ばれる山岳観光地域構築」をコンセプトに掲げてさまざまな事業を推進している組織

HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs宣言

HAKUBAVALLEY TOURISMは、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、「山岳エコツーリズムの聖地」として持続可能な観光地域づくりに取り組みます。

HAKUBAVALLEY TOURISM SDGsビジョン

自然の豊かさと心の豊かさにあふれる持続可能な山岳エコツーリズムの聖地へ
• 多様な生き物を育む北アルプスの山、雪、水をまもります
• 自然の恵みをいかして、食べ物やエネルギーの地産地消をめざします
• 人にも自然にもやさしく、住む人も訪れる人も誰もが幸せを感じられる豊かなまちをつくります
• 先人の知恵を大切にしながら、新たな技術で変化を生み出し、より良い社会をつくります
• 未来の世代に持続可能な地域を受け継ぐため、共に学びあいみんなで行動します

長期目標 (2030年)

HAKUBA VALLEYエリア内全ての事業者がSDGs取り組みチェックシートを実践しており、世界を代表する山岳エコツーリズムの聖地となっている。

中期目標(2025年)

SDGs取り組みチェックシートがエリア内全ての事業者に配布されており、全事業者が取り組みを進めている。また、北アルプスの自然環境にとって最も脅威であり緊急性を要する気候危機に関わる項目が優先的に実践されており、HAKUBA VALLEYが持続可能なリゾートとして日本の先駆者となっている。

索道:エリア内全スキー場が電力の再生可能エネルギーへの切り替えを進めている
その他、宿泊・飲食・小売の観光関連事業者向けにも、今後目標を設定していく

そもそも、持続可能な開発目標SDGsエス・ディー・ジーズとは?

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

※詳しくは外務省のHPでご確認いただけます

 

HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の取り組み

近年の雪不足を背景に、HAKUBA VALLEYエリアでは気候変動問題に対するアクションが活発になっています。
白馬村と小谷村が「気候非常事態宣言」を表明したことや、POW Japanによる脱炭素社会の実現に向けた啓蒙活動、スキー場で使用する電力の一部を再生可能エネルギーに切り替える動きなど、国内のスノーリゾートとしては先進的な取り組みが続いています。

そのような中で結成されたHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会は、どのような想いを持って目標の実現に向けて取り組んでいるのか。今回は、SDGs小委員会の委員長を務めるHakuba SDGs Labの草本朋子さんと、結成当初より委員として参加されている高田翔太郎さんにお話を伺ってきたのでご紹介したいと思います!

委員長の草本朋子さん

委員長の草本朋子さん・・・東京大学経済学部卒。外資系金融機関に勤め、長女の出産を機に退職。
旅行で訪れた白馬村の景色に感動し2009年に移住。白馬の美しい景色を子どもたち世代に残したいと思い、2019年に地域住民と協力し「Hakuba SDGs Lab」を設立。HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会には立ち上げのタイミングから参加。

副委員長の高田翔太郎さん

高田翔太郎さん・・・札幌市出身。大学在学中からパタゴニアに勤め、2013年のパタゴニア白馬店のオープンとともに白馬村へ移住。
現在は大町市在住。POW Japanの事務局長を務め、スノーコミュニティ発の脱炭素社会の実現を目指して活動中。

HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会は、HAKUBAVALLEY TOURISMが事務局となり、スキー場・飲食店・宿泊施設などの観光事業者、3市村の観光課など、総勢約30名のメンバーで構成されています。

月1回の全体ミーティングの他に、月に数回はコアメンバーでミーティングを実施。「山岳エコツーリズムの聖地」を目指して、それぞれの立場から知恵を出し合っているそう。

ーHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会 立ち上げ後から現在までの活動

草本さん:「まずは、さまざまな業態の事業者が小委員会のメンバーにいらっしゃるので、進むべき方向を明確にするためにビジョンを決めました。

その後は、中長期目標の検討と、3市村の観光団体を通じて、HAKUBA VALLEYエリア内の観光事業者を対象にSDGsの意識調査アンケートを実施しました。アンケートの結果、『SDGsという言葉は聞いたことがあるけどよくわからない』『興味はあるけど何をすればいいかわからない』『コストがかかりそう…』『自分はやりたいけど会社の理解を得られなそう…』という意見が多く挙がりました。

SDGsは難しいイメージがありますが、実は各々が普段から何気なく実践していることがたくさんあって。例えば、食べ残しを減らすことや、地産地消を推進することも重要な取り組みのひとつです。なのでSDGsを周知できるように事業者ごとの『SDGs取組みチェックシート(案)』を作成し、2021年1月からモニター事業者に実際に使っていただきました。そのフィードバックを反映したものを、4月以降から本格的に運用します」

SDGsチェックシートの一例

SDGs取組みチェックシート(案) 。こちらは宿泊事業者向けのシートだが、飲食店など全部で5業態分ある

 

大切なのは「トランスフォーム」

ー2030年までに達成を目指す長期目標はすごく高いハードルに見えるが…

草本さん:「目標は言ったもの勝ちだと思います。理想の未来を描かないとその未来は絶対にやって来ない。2030年まではすでに10年を切っていますが、小委員会のメンバーで知恵を出し合って実践していければ不可能ではありません。」

高田さん:「SDGsで大切なのは、ちょっとした変化ではなく『トランスフォーム』。形が変わる大きな変化が必要です。いまできることを目標にするのではなく『どうありたいか』をイメージしないと、SDGsの実現は難しいと思います。確かに高いハードルですが、10年前にイメージできなかったことでも、いま実現できていることが多いですよね」

草本さん:「本当は、中長期目標を決めるミーティングのときに『2030年までに100%再生可能エネルギーに切り替える』とスキー場には宣言してもらいたかったです。実現できなくても罰せられるわけではないですし、そういう宣言をしているスキー場で滑りたいと思う人は多いはずです」

高田さん:「そういう宣言を社会に発信することはすごく大切ですね。HAKUBA VALLEYエリアのスキー場は世界的に有名で、スキーヤー・スノーボーダーにとって憧れの場所。そんなネームバリューのあるHAKUBA VALLEYエリアから『使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えます』と宣言したらものすごくインパクトがあると思うんですよ。

今日(2021年3月17日)、信濃毎日新聞の一面に大きく掲載されていたのは、セイコーエプソンが『2023年までに全世界のエプソングループ拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替える』という宣言でした。しかも国内拠点は2021年度中に実施すると宣言しています。このような記事が地方紙の一面に載るような時代になってきたんです」

草本さん:「でもスキー場にはスキー場の事情があって…ミーティングのときに少し揉めてしまいました。相手を追い込んではいけないのだと後で反省しました。だから、経済状況や立場に関わらず全員で支え合って取り組んでいきたいと思います」

 

成功の鍵は、ビジネスに結びつけること

ーこの一年、HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の活動を通して感じた課題

草本さん:「わかりやすく伝える難しさや、興味を持ってもらうことの難しさを感じました。気候変動は特に、何が一番効果的なのか素人が判断するには難しい分野です。なので例えば、大学の教授にミーティングに加わっていただき、科学的な側面からアドバイスをいただけるとより説得力が伴った活動になると思います。あとは、メディアに溢れているさまざまな情報に惑わされることなく、自分なりの真実や正しいと思うことを発信していきたいですね」

高田さん:「そもそもですが、3市村の全ての事業者を対象とした取り組みは壮大ですよね…。HAKUBA VALLEYエリア内には色々な考えを持った事業者がいますから。SDGs小委員会がどういった役割を担い、どのような情報発信をしていくのか明確にしないと。そこに難しさを感じています」

ー手応えや成果を感じたこと、今後の決意

草本さん:「SDGs取組みチェックシート(案)のモニターを募集したときにすぐに応募してくれたり、すでにSDGsに取り組んでいる事業者が実はエリアにたくさんいるとわかったことは心強かったですね。また、小委員会のメンバーは無報酬にも関わらず、この活動に意義を見出し、自分にできることは貢献したいと思ってくれている人がとても多いです。草の根ムーブメントのような感じで一緒にやっていける仲間が多いのがこのエリアのすごさだと感じます」

高田さん:「長野県のお墨付きをもらっている広域型DMOから、SDGs宣言や目標を掲げられたことは、成果と言えると思います。今後は、目標を実現するために、活動で肉付けしていく必要があります」

白馬八方尾根スキー場

この美しい景色を守るために

草本さん:「観光地としてSDGsを推し進めるのは難しい面もありますが、決してグリーンウォッシュではなく、HAKUBA VALLEYエリアが本当の意味でSDGsの実現に向かって取り組んでいくことは大きな挑戦です。『HAKUBA VALLEYならできるはず』という思いも強いです」

高田さん:「山があって、川があって、湖があって、それに雪が降って。HAKUBA VALLEYエリアは豊かな自然の恩恵を受けて観光産業が成り立っています。世界各国から観光客が訪れ、人の多様性もある場所。だからこそ目標を掲げたことに満足せず、しっかり観光ビジネスに結びつけることが成功の鍵になると思います」

ー具体的なアクションプラン

高田さん:「情報発信ツールの制作ですね。現在はツールが何もないので、WEBサイトを立ち上げて情報を集約したり、我々の取り組みや活動スケジュールをまとめて、もっと多くのかたに知ってもらいたいです。あとは冊子のように、全事業者が手にとって見ることができるツールも作る予定です。イラストを用いてどの年代の人が見てもわかりやすいものにしたいです。

SDGs意識調査アンケートには、講習会をやってほしいという意見も多かった。我々小委員会のメンバーはSDGsの専門家ではないので、専門家を招いて事業者さんと一緒に学んでいく機会を作りたいと思います」

 

誰一人取り残さない

ーHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の取り組みで大切にしていること

草本さん:「国連が採択したSDGsでは『誰一人取り残さない』と誓っています。HAKUBA VALLEYエリアでも『余裕がある人だけが取り組めばいい』『うちは経営が厳しいから協力できない』という事業者が出ないように、誰も疎外感を感ることなくお互い協力しながら進めていきたいです」

五竜遠見尾根をハイクアップする人たち

アンテナ白馬では今後もHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の取り組みを発信していきます

今回は、草本さんと高田さんにHAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の取り組みについてお話いただきました。

HAKUBA VALLEYエリアは「山岳エコツーリズムの聖地」を目指して動き始めたばかり。
今後もアンテナ白馬では、SDGs取組みチェックシートを運用している事業者への取材や、HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 小委員会の活動に密着し、情報発信をしていきます!

 

HAKUBAVALLEY TOURISM SDGs 時系列

2019年4月(令和1年度)
  • 大町市・白馬村・小谷村の三市村の観光地域づくりDMOとして、(一社)HAKUBAVALLEY TOURISM(以下、HVT)設立
  • 社員(出資者):索道事業者、大町市・白馬村・小谷村 行政および3市村観光団体「世界から選ばれる山岳観光地域の構築」を目標に掲げ活動を開始。
20203 SDGs小委員会を組成
2020年4月~(令和2年度) 活動内容:

  1. HVT SDGsビジョンの策定を開始する。
  2. ビジョン決定後、中長期目標につき検討を開始する。同時に、各観光関係事業者(業種:索道・宿泊・飲食・小売)向けにチェックシート案の作成を開始
202010 プレス発表会を開催 ビジョン、目標、今後の取り組みについて公表
202011 モニター事業者を募集
目的:作成したチェックシートに取り組んで頂き、ご意見を提供頂く。
20211 モニター活動開始



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